大会企画

特別講演

第1会場:展示室1-B 10月26日(土)15:30-16:30

「深層学習とマルチモダリティの可能性」

東北大学大学院医学系研究科 保健学専攻医用画像工学分野 教授

本間 経康

「人工知能」という言葉の定義はいくつか存在し,専門家の間でも完全な一致はないが,現在,社会への普及が期待されている人工知能は,ほぼすべてと言ってよいほど深層学習と呼ばれる神経回路網モデルに基づいている.深層学習は,とくに画像認識や分類において優れた性能を示し,放射線医療技術関連では,画像診断分野での計算機診断支援システムに加え,放射線治療分野でも治療計画,線量推定・評価システムなど様々な応用が期待され,当然モダリティも多岐にわたる.

技術的には,認識や分類に必要な,対象の数理的特徴を大量の(膨大な数の)例題から自動的に抽出・獲得する能力が,その中核であるとみなすことができる.実際,深層学習以前の診断支援システム開発で困難を極めたのは,この特徴量抽出であり,開発者による明示的な数理設計では専門医のような病変検出や悪性度診断性能を達成することができなかった.

現在は,この自動化された特徴量設計により,典型的な画像所見の検出はもちろん,その良悪性鑑別などでも,専門医に匹敵,場合によってはそれを超える性能が達成可能であると考えられており,文献等でもそのような報告が増えている.しかし,深層学習で獲得される性能は,(訓練)データの量と質に依存する.また,獲得された性能(の根拠となる特徴量)の明示的数理表現を得ることが難しいため,臨床応用に向けては検出や鑑別の正確性だけでなく,精度保証や信頼性の担保も課題であることが指摘されている.

本講演ではこれらの課題に対し,訓練データの量と質の保証や安全性,性能の数理的評価,さらには深層学習が専門医の診断を超える可能性の検討について,我々の試みを紹介し,放射線診断学ならびに放射線治療学への将来的な貢献について展望する.

一方,機能面に目を向けると,深層学習が例題から獲得するのは写像関数(入力と出力の関係)である.これは非常に一般的な機能であり,多様な応用範囲を持つ.だからこそ期待が大きいのであるが,その1つに多様な入力,すなわちマルチモダリティを扱うことが可能で,より複雑な特徴量を抽出したり,入力(モダリティ)間の関係性をモデル化したりすることも可能である.つまり,深層学習の枠組みは原理的にマルチモダリティと相性が良いとみることができる.たとえば,異なるモダリティ間の関係性をモデル化することで,single energyの撮影から疑似的なdual energy画像を合成して病変描出能を向上させたり,同様な入出力写像の学習により,MRIからCT像を合成して治療計画に応用したりする試みなども報告されている.このような可能性と今後の課題についても紹介する.

市民公開講座 「もっと知ろうよ 乳がんのこと」

第1会場:展示室1-B 10月27日(日)13:35-14:30

「乳がんの診断から治療まで」

東北大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科学分野 教授

石田 孝宣

乳がんは,年間約10万人が新たに診断される日本人女性に最も多い悪性腫瘍です.生涯の累積罹患は,欧米の7人に1人に迫る11人に1人まで増加してきています.

現状では乳がんになることを予防するのは困難です.そこで,早期に発見することが重要となり,乳がん検診が大きな役割を果たします.乳がん検診には,税金などの公的な資金を用いる対策型検診と私的な資金を用いる任意型検診がありますが,いずれもマンモグラフィが基本となります.国の目標は,受診率50%以上ですが,これが達成できている地域は少数です.宮城県は,約60%の受診率を達成しており,日本でも有数の検診先進地域といえます.

乳がんは体表の臓器の病気であり,自分で発見できる数少ない腫瘍です.診断には,視診,触診,画像診断があり,乳がんの種類によってそれぞれ特徴があるため,それらを正しく知ることで,効率よく,より早期に診断することが可能です.

画像では,マンモグラフィと超音波が診断の両輪であり,それぞれの特性を活かして補いあうことが重要です.これに,CT,MRI,PETなどを組み合わせることによって,検診,手術前後の初期治療,転移・再発治療の各状況に応じて,より精密な診断を行うことが可能となります.

乳がんの治療には,手術,放射線による局所療法と薬剤による全身療法があります.早期では,局所療法が主役ですが,進行・再発では薬物療法が主役となります.手術療法は時代とともに変遷し,現在では,乳房温存手術が全国の乳がん手術の約半数を占めています.

また,乳がんの薬物療法には,3つの柱があります.1つ目は化学療法(抗がん剤)で,すべての乳がんに使うことができますが,効果があるかどうかは使ってみなければわかりません.2つ目は内分泌療法(ホルモン剤)です.これは,ホルモン感受性が陽性の場合が適応で,全乳がんの約80%が対象となります.3つ目は分子標的療法です.その代表は膜型糖蛋白であるHER2を標的にした治療です.全乳がんの15—20%がHER2陽性で,これらに使う事ができます.乳がんと診断された時点で,どのタイプに属するのかを調べることは,治療を選択する上で最も重要な因子となります.

本市民公開講座では,こうした画像診断,および治療の進歩と今後の可能性について一緒に学びたいと思います.

 

 

 

  大会長講演

第1会場:展示室1-B 10月26日(土)10:00-10:20

「Beyond all Radiversity」

東北大学病院    坂本博

  近年の診療放射線技術を取り巻く環境は,多様な観点から変化,進化している.我々はそこに立ちはだかる壁をいくつも乗り越えなければならない。本大会テーマである「Beyond all Radiversity」とはこのような時代に対する意気込みとして掲げた。診療放射線技師、および研究者の視点から世界情勢も鑑みて本大会のスタートアップをさせていただく.

 

 

シンポジウム1「医療安全の適正化がもたらす影響」 第1部 

第1会場:展示室1-B 10月26日(土)10:20-11:50

基調講演 

「医療法改正と線量管理について」

国立病院機構横浜医療センター 北村 秀秋

平成31年3月11日に厚生労働省から医療法施行規則の一部を改正する省令が公布され,令和2年4月1日から施行となる.改正された規定によって,病院又は診療所において診療用放射線の安全利用に係る体制の確保を行うことが義務化された.

厚生労働省で行われている医療放射線の適正管理に関する検討会では,医療被ばくの適正管理のあり方について,放射線国際防護委員会の勧告や日本の医療被ばくの現状をもとに議論し,その議論をもとに医療法施行規則の改正に至った.当該規定は,診療用放射線の安全利用のための責任者の配置,診療用放射線の安全利用のための指針の策定,放射線診療に従事する者に対する診療用放射線の安全利用のための研修の実施,放射線診療を受ける者の当該放射線による被ばく線量の管理及び記録その他の診療用放射線の安全利用を目的とした改善のための方策の実施である.今回は,当該検討会の内容を踏まえて,これらの規定等に関する内容を説明する.

シンポジウム 1-A「医療被ばくにおける施設の取組み」

「当院における医療被ばく低減施設認定までの取り組み」

星総合病院 佐久間 守雄

日本診療放射線技師会放射線管理士分科会 東北担当幹事

私の所属する公益財団法人星総合病院は,2019年1月に公益社団法人日本診療放射線技師会(以下日放技)の医療被ばく低減施設第89号に認定された.当院の取り組みを報告することで,貴施設の受審のきっかけになれば幸いである.

審査の流れは,①日放技へ受審申し込み,②送付された審査関係書類(受審申込書・現状調査票・自己評価調査票)提出,③提出された書類に基づく書面審査,④サーベイヤーによる訪問審査となる.

自己評価調査票の審査項目は,「行為の正当化」と「放射線防護の最適化」に関する中項目10小項目49に及び,その中には必須評価項目である,①患者の被ばく線量に関するデータ(検査や手技毎の組織・臓器線量,照射線量情報)の把握と評価,②検査・治療毎のDRLs(一部医療被ばくガイドライン2006)との比較検討,③認定資格者(放射線管理士,放射線機器管理士)の在籍と有効活用も含まれる.

医療被ばくの正当化及び最適化の推進は,医療者全体で取り組むべき医療安全の確保の1つである.医療被ばく低減施設認定までの取り組みはまさにその通りであり,この取り組みに診療放射線技師が率先して行動することで,院内及び地域における放射線診療の信頼性の向上が図られるだろう.

「医療被ばく管理システムの使用経験」

竹田綜合病院 小柴 佑介

日本では人口一人当たりのCT設置台数は世界一であり,世界から見ても医療被ばくが高いと指摘を受けている.また,震災の影響もあり被ばくに関して世間での関心は高く,放射線を使用する上で『正当化』と『最適化』を十分に検討し,適切な線量で検査を行なわなければならない.

2019年3月12日に診療放射線に係る安全管理に対する規定について発表され2020年4月1日から医療被ばくの線量記録と線量管理が義務化されることが決定した.当院ではMPPSで各部門の装置から返ってくる線量情報をRISに記録し運用している.

今回,線量管理のサブシステムとしてアゼモトメディカルの医療被ばく管理システムAMDS(以下AMDS)を導入し,CT装置,アンギオ装置,透視装置からRDSRをAMDSに送信しRISと併せて線量情報を蓄えている.AMDSの導入によりDRLS2015と自施設での線量を比較し,撮影プロトコルの見直しや撮影線量の最適化に役立てられると思われる.AMDSの特徴としてリンケージ機能が挙げられ,リンケージとは各施設や機器特有の異なる検査名(検査プロトコル)を統一化する処理で,異なる機器間での線量の比較が容易に可能となる.当院ではGE社製のCT装置2台使用しておりCT装置間のルーチンの検査で撮影線量に差が表れるか,DRLと比較して撮影線量が上がってしまうのはどういった場合なのか検討したので報告する.

シンポジウム1「医療安全の適正化がもたらす影響」 第2部

第1会場:展示室1-B 10月26日(土)13:00-14:40

シンポジウム1-B「モダリティ別における線量管理の現状と問題点」

来年度施行の医療法施行規則の改訂施行に向けて,線量管理が義務付けられているCT・血管撮影・核医学における現状と問題点を各シンポジストに発表いただき,来る改正施行に臨む対応策を討論する.また,全国循環器撮影研究会が行っているIVR被ばく線量低減推進施設認定が13年目を迎え,線量管理を先駆けて行ってきたシステムを紹介する.

「CT検査における線量管理の現状と問題点」

新潟市民病院 神田英司

CT検査における医療被ばくの適正管理は,合理的に達成可能な線量の最適化のため重要な取り組みである.

管理内容として,DRLとの比較のため複数患者のCTDIvol(mGy)とDLP(mGy・cm)の中央値(又は平均値)の分析,患者個人の線量記録として機器に表示されたDLP(mGy・cm)及び撮影部位の記録が挙げられる.

管理の義務化にむけて複数のX線線量管理システムが発売され,確実に普及しつつある.システムの活用によりデータの蓄積は効率的に行うことが可能となったが,同時に問題点も見えてきた.

収集した線量データを十分に活用することができているか.

異なる装置・プロトコルの線量データをDRLと正確かつ効率的に比較できているか.

部署内で必要なルールを認識し線量管理に対して理解が進んでいるか.

勤務時間内に作業できる環境を用意できているか.

本シンポジウムでは,DICOM情報の整理・確認など導入時のポイントやプロトコル単位・スキャン単位の正確な管理を行うための運用方法を当院の事例を挙げて紹介する.

「全国循環器撮影研究会 IVR被ばく低減施推進施設認定と線量管理」

竹田綜合病院 皆川 貴裕

厚生労働省は2019年3月,医療法施行規則の一部を改正する省令を公布した.それに伴い2020年4月より,新たに診療用放射線に係る安全管理体制に関する規定が施行されることとなった.その内容は,診療用放射線の安全利用のための指針の策定・放射線診療従事者への安全利用のための研修の実施・被ばく線量の管理および記録の義務化である.被ばく線量の管理および記録の点では,当院は2016年にIVR被ばく低減認定施設を取得し,Excelを使用した血管撮影領域の線量管理を行ってきた.主な管理項目は,患者ID・検査日・手技内容・透視時間・空気カーマ・面積線量・造影剤の種類と使用量である.また皮膚の一過性紅斑のしきい線量である2Gyを超えた場合には,RISのブックマークにチェックをつけるなど皮膚障害が発生した場合にはすぐに線量を医師へ伝達できるよう取り組んできた.この度医療法規則の改正を受け,2018年12月にアゼモトメディカル社の線量管理システムであるAMDSを導入した.AMDSは線量情報をDICOMタグ情報やRDSRで取得し,診断参考レベルとの比較や患者毎の線量管理などを行うことができる.散布図で外れ値が認められた際には,散布図のプロットを選択することで対応する線量情報を表示し,外れ値の分析が可能である.本シンポジウムでは,線量管理システムによる長所と短所,当院の管理方法の現状について報告する.

 

「核医学検査における投与量適正化について」

秋田県立循環器・脳脊髄センター 佐藤 郁

核医学検査では,検査予定時刻と被検者体重などを考慮して前日にメーカーへの注文をして薬剤準備を行っている.検査当日の実施時刻により予定の投与量より増減が生じている.これまで投与量の決定は,メーカー添付文書の記載を基に決定されていたが,2015年に本邦における診断参考レベル(DRL)が発表され投与量の参考にすることが可能となった. 最近は,調剤済みの製剤を購入している施設が多く,被検者ごとに実投与量を物理的半減期の補正により推定することが可能である.検定時刻の放射能量を投与量として記録している場合には,投与を検定時刻前にすると過小評価してしまうため注意が必要と考える.PET製剤は,検定時刻の約1半減期前に配送されるため配送直後の投与ではDRLの目安を超える場合がある.特に低体重の被検者への投与には注意が必要である.検査予約時に体重など身体情報も取得して投与時刻を調整するなど対策が必要と考える.

現在,放射線部門システムを利用して受入れと投与及び保管廃棄までの管理を行うことが可能となり多くの施設で導入が進んでいる.実投与量の集計が簡便に行えるシステム導入が望まれる.先ずは被検者の体格等も考慮可能な実投与量の解析が行える環境整備が重要と考える.

投与量の検討には,投与量と装置収集カウントの関係の把握が必要と考える.脳血流などではファントム試験による画像評価法を示したガイドラインが公表されており応用可能か検討して,施設ごとにエビデンスを持った決定が必要である.

「全国循環器撮影研究会 IVR被ばく低減施推進施設認定と線量管理」

秋田県立循環器・脳脊髄センター 加藤 守

国際放射線防護委員会(ICRP)は2000年にPublication 85としてAvoidance of Radiation Injuries from Medical Interventional Proceduresを発刊した(日本語訳 IVRにおける放射線傷害の回避は2003年に発刊).血管撮影に携わる者として,放射線皮膚障害や脱毛の実際の写真に大いに衝撃を受けた.この勧告では,放射線防護の教育訓練が不可欠としている.また,患者に対するインフォームドコンセントやカウンセリング,線量記録,線量注意喚起レベル,高被ばく患者の経過観察の必要性を強く唱えていた.

このような状況下,全国循環器撮影研究会では被ばく線量低減,線量管理の重要性を啓発すべく,「IVR被ばく低減推進施設認定」を2007年から開始した.この取り組みは13年目に入り,認定施設は延べ154施設となった.審査項目は必須項目8を含む全部で20項目がある.主な項目は保守点検記録,漏洩線量記録,基準透視線量・撮影線量の測定,始業・終業点検,線量管理記録簿,スタッフに対する教育訓練,線量管理目標値の設定,目標値を超えた際の対処法などである.

来年施行の医療法施行規則改訂に繋がる取り組みを全国循環器撮影研究会では10年以上前から取り組んできた.また,線量記録は当初からExcelなどの表計算ソフトでの管理を推奨してきた.来年公表されるIVRの臨床線量での診断参考レベルとの比較も容易に可能である.全国循環器撮影研究会の施設認定を基にした線量管理記録法を紹介する.

 

  シンポジウム2 「マルチモダリティシーンが躍進する救急医療における課題とその取り組み」

第1会場:展示室1-B 10月26日(土)16:40-18:10

救急医療においてマルチモダリティシーンが躍進するなか,これまで以上に多職種連携の必要性が叫ばれ始めています.救急医療でのRadiology Suiteおいて診療放射線技師がどのような課題を抱え,どのような解決方法を見出そうとしているのか,東北各地域の救急医療の要となっている施設の方々より講演をして頂きます.また招聘講演には,全国に先駆けてHybrid ERを導入した大阪急性期・総合医療センター 放射線部門の中 智章 先生にご講演を賜ります.現在の救急医療におけるRadiology Suiteの先進的な形であるHybrid ERにおいて,スペシャリティが問われる環境のなか医師や看護師らと交わりながら,シーンに応じて,どのようにしてイニシアチブを握り,また教育的なリーダーシップの指揮をとっているのか,一歩も二歩も踏み込んだ診療放射線技師の姿についてお話を頂きます.救急医療における放射線技術の多様性について,聴講される皆様と大いにディスカッションをできることを楽しみにしております.

「Hybrid ERにおける診療放射線技師の役割」

大阪急性期・総合医療センター 中 智章

当センターは2011年8月に世界で初めて,初療室にIVR-CTを設置したHybrid ERの運用を開始した.この世界初の試みを成功させるため,初療室という過酷な環境下でIVR-CTを安定して稼動させることを目標とし,診療放射線技師として様々な検討と対策を講じた.このHybrid ERではIVR-CTの寝台を処置台として活用する方式を採用し,患者を移動させることなくCTによる画像診断とIVRが可能となった.時間との闘いとなる重症外傷診療において,患者移動の必要がないHybrid ERは迅速な診断と治療が可能となり救命率の向上につながっている.Hybrid ERでは外傷初期診療のアプローチが従来の初療室と大きく異なり,CTが診断の要となるため診療放射線技師は重要な役割を担う.特にCTの撮影プロトコールや迅速な行動が求められる技師の撮影スキルはHybrid ERシステムとしてのパフォーマンスに影響するため,技師の教育は欠かすことができない.また,医師や看護師との連携も不可欠であり,Hybrid ERにおける治療戦略について共通認識を持つことは重要である.当センターでは外傷診療に従事するスタッフの共通認識を高めるため,症例検討会を開催し外傷診療の質の向上に取り組んでいる.本講演ではHybrid ERの導入時や運用上の診療放射線技師の役割,当センターでの教育や取り組みについて紹介する.

「劇的救命 ~救急医療における当院の現状と課題について~」

八戸市立市民病院 竹洞 潤希

当院は,青森県南地域の中核的病院として,1次救急から3次救急まで年間20000件程の救急患者を受け入れている.その中には,脳卒中,心疾患,急性腹症,外傷,CPA患者など様々な病態の患者が含まれているため,我々診療放射線技師も診療内容を理解し,迅速な検査の施行,的確な画像情報の提供が求められる.

そのような状況下,当院には救急用の撮影室がなく,初療室から放射線部門までの距離が離れているという背景があり,度々診療に影響を与えてきた.当院では,2015年から急性期脳梗塞に対する血栓回収療法を開始した.それに伴い,脳卒中診療体制の見直しも行った.プレホスピタルケアや病着後CT室に直行するダイレクトCTの運用開始により,撮影室の距離が離れているというデメリットを解決し迅速な治療を可能にしてきた.また,外傷診療においてもダイレクトTrauma Panscanの試みを行っているが,初療室とCT室の距離が離れているため急変時のリスクが高く課題や問題も多いのが現状である.

今回の講演では,救急医療の中で特に多職種連携が重要で,チームとしての診療放射線技師の役割が大きいと思われる脳卒中診療と外傷診療に焦点を絞り,二次医療圏施設の立場から当院の現状や取組み,問題点や今後の課題について述べていく.

「多職種協働時代における診療放射線技師の役割 必要とされるRTを目指して-」

山形県立中央病院 荒木 隆博

救急医療における画像診断および治療は,モダリティや画像処理技術ならびに,情報処理技術の目覚ましい進歩とともに発展してきた.その恩恵を患者に最大限還元するためには,高度な放射線医療機器を扱えるテクニカルスキルだけでなく,多職種との円滑なコミュニケーション技術や,気づきのスキルなどのノンテクニカルスキルが,診療放射線技師に求められる.我々診療放射線技師もチームの一員として,協働することが救急医療の質を左右すると言える.当院はドクターヘリ基地を併設し,山形県全体の高度救急医療の一翼を担っており,診療放射線技師も医師や看護師と共に,日々患者の救命率の改善に取り組んでいる.例えば,脳卒中疑いの患者がドクヘリで病院に搬送されると,すぐにCTを撮影する‘ダイレクトCT’の運用が挙げられる.これはフライト班と救命救急センターならびに,CT担当技師との連携が肝要となる.このような多職種間の良好なコミュニケーションをもとにしたチームとしてのパフォーマンスが,救急医療の質に大きく関与すると考える.本講演では,行政県における三次救急病院が抱える,救急医療現場での様々な問題や課題と,それらの解決に向けた当院の取り組みを紹介する.そして,参加者とのディスカッションを通して多職種協働時代における診療放射線技師の役割を模索したいと考える.結果として救急シンポジウムが,参加者にとって自施設の救急医療における問題解決の一助になれば幸甚である.

「当院Hybrid ERおける診療放射線技師を取り巻く問題点,そしてその対策と取り組み」

東北大学病院 小野 勝範

救急医療では何らかの医学的介入なくしては病勢の悪化が避けられない患者を速やかに診療し,治療に導くことが求められる.そして救急という特殊環境において,救命につながる正確な画像を救急科医師に迅速に提供することが救急に携わる診療放射線技師の使命であると考える.2018年5月に東北で初となる,CT,血管撮影装置と手術室機能を備えたHybrid ERが当院に開設された.このHybrid ERは,初期治療をすると同時に,移動することなく,CT検査や止血のための血管内治療や手術などをすることができるユニットのため,救急科医師,看護師をはじめ,診療放射線技師,臨床工学技士,救急救命士など多くの職種が同じ時間軸で協働することが多く,これまで以上に職種間連携が必要不可欠なものとなった.また,患者ももちろんのこと医療スタッフも移動することなく画像検査やIVRを行えることは,これまで以上の安全と被ばくへの配慮,そして迅速かつ正確なCTおよび血管撮影装置の操作が求められ,これまでとは異なるテクニカルスキル,およびノンテクニカルスキルの必要性を実感している.本講演では当院のHybrid ERが開設されてから約1年余で経験してきた診療放射線技師を取り巻く問題点,そしてその対策と取り組みを医療安全,撮影テクニック,多職種連携の観点から紹介したい.

シンポジウム3  「放射線治療における独立検証を考える」

第3会場:会議室2 10月26日(土)13:00-14:30

放射線治療を担当する放射線技師にとって,治療計画装置の計算結果の正しさを検証することは,安全,かつ有効な治療を行うために極めて重要な作業である.治療開始前には様々な方法で検証を行うが,臨床を想定した全てのプランを検証することは不可能である.そのため,臨床開始後,個別の患者プランごとに,治療計画装置とは別のシステムを使用したMU独立検証を行うことが,医療事故の防止,更には治療計画装置の内部で行っている処理の理解に繋がる.しかし,治療計画装置の計算精度は年々向上しており,最近では肺野など不均質な媒質中やその周辺でも精度の高い線量計算を行うことができるようになっているが,多くの独立検証システムでは患者は均質な水かつ単純な形状として扱うことが原因となる誤差が生じる.

そのため,その際に生じる誤差を加味した評価基準の設定が求められる場合もある.一方,最近発売された独立検証システムは計算精度・機能が向上しており,MUの計算だけでなく体内臓器の輪郭情報を基に体積線量の計算を自動で行う機能も追加されてきている.本企画では,そのような奥が深く幅の広い独立検証について,基礎の理解から最近のトレンドまで網羅した講義・報告を行う.また,放射線治療あすなろ会と連携して,事前に東北・新潟地区の独立検証の現状についてアンケート調査を行った結果を報告し,参加者と情報共有を行う.

「アンケート調査結果(東北・新潟地区の独立検証の現状の確認)」

新潟脳外科病院 滝澤健司

放射線治療研究班ではシンポジウムのテーマを「独立検証を考える」と設定した.患者に対して放射線治療装置から出力される線量は放射線治療計画装置が計算したモニタ単位数(MU値)により決定づけられるため,MU値の正しさを独立した方法で検証すること(独立検証)が重要である.独立検証についての意義や方法,結果の解釈,許容値を超過した場合の対処法などについては各施設の判断に委ねられている部分が多い.そこで本研究班ではシンポジウムに先立ち,東北・新潟地区の放射線治療実施施設における独立検証に関する現状を共有し,議論を深める目的でアンケート調査を実施した.本報告ではこれらの調査結果について報告し,参加者との情報共有を行う.

「MU独立検証の基礎(MU独立検証の意義とMU計算の仕組みの理解)」

新潟大学医学部保健学科 早川岳英

放射線治療の照射は医療行為であり,精密かつ正確な照射を保証するために独立した検証を必要とする.その独立検証の方法の一つに,患者への投与線量を決めるmonitor unit(MU)の独立検証がある.MU独立検証は,治療計画装置(RTPS)で計算される①一次MUと,RTPSと独立した手法による②検証MUの2種類のMUを比較する.通常,①は実際の患者の治療に適用し,②は検証することのみを目的とする.①と②は方法が異なるが,同一のビーム設定で,同一(または類似)の計画標的体積(PTV)の処方点に,同一の線量を投与する照射条件で計算または測定により求められる数値である.適切にコミッショニングされたRTPSとMU独立検証の方法を用いると,①と②の間の差異は一定の範囲に収まる.その差異を,例えば±2%までは照射を容認できる許容レベル,±5%を超えると是正が必要な介入レベルのような評価基準を設定し評価することで,照射ビームごとの安全性をチェックする.②を求める方法には,(a)ファントムを用いた測定,(b)市販の独立計算検証ソフトウェアやExcelシートを用いた計算,(c)異なる機種のRTPSを用いた計算などがあり,簡便さと経済性の点で(b)を採用している施設が多いと考える.近年はRTPSの計算アルゴリズムの進化と高精度照射法の増加に伴い,①と②の差異が想定レベルを超えるケースも多く,MU独立検証の意義が不明確になっていると感じる.そこで,今回は主にAAPM Task Group 114の内容に基づいて,MU独立検証の意義とMU計算の仕組みについて再確認していただく機会になればと考える.

「ソフトウェアを使用したMU独立検証 臨床運用の掲示・評価基準の設定方法―」

福島県立医科大学附属病院 長澤 陽介

MU独立検証は,Excel等の表計算ソフトや手計算,自作/市販のソフトウェアなど,施設によって様々な方法で行われている.その中で市販のソフトウェアは,種々のメーカーから販売されているが,多くの製品に該当する共通項として,DICOMファイルからプラン情報を取得することで,検証のワークフローを効率化できる点が挙げられる.一方,製品によって異なる点として,例えば,線量計算にユーザーによって計測されたビームデータを用いるか/予め搭載された標準的なデータを用いるか,対応する照射法は通常照射のみか/強度変調放射線治療などの特殊照射にも対応しているか,などが挙げられ,製品毎にそれぞれの特色を有している.実際にMU独立検証を行う上で,われわれに課される問題の1つに評価基準の設定があるが,施設によって放射線治療計画装置や線量計算アルゴリズム,独立検証の手法が多種多様であるため,独立検証の許容値を一意に定めるようなガイドラインは我が国には存在しない.したがって,各施設が独自に,安全性と業務量のバランスを考慮しながら,運用しているのが現状である.

当院では,2016年よりアールテック社製MU CHECKを用いて,通常照射のプランに対する独立検証を行っている.評価基準の設定や,許容値を逸脱した場合の対応等は,できる限りシンプルな運用となるように心掛けている.そこで本報告では,当院におけるMU独立検証の臨床運用,および評価基準の設定方法を一例として紹介する.

「独立検証の最近の動向(線量分布の独立検証,基準ビームデータ利用時の独立検証)」

東北大学病院 佐藤清和

最近の独立検証ソフトは処方点のMU値,線量だけでなく線量分布全体を評価でき,ビームデータを入力する必要が無いものも発売されてきている.それらのソフトを導入する際にはコミッショニングが非常に重要となる.従来からの独立MU検証に使用される手計算やExcel,ソフトウェアを使用する場合にもそれぞれのシステムに対応した測定とコミッショニングが必要となる.最近のトピックスである基準ビームデータを治療計画装置に利用する場合,精度を維持したまま治療開始までの期間を短縮でき,登録するビームデータのエラーを限りなく小さくすることができる.独立MU検証には登録ビームデータのエラーの確認の他,処方点の位置,照射門ごとの細かな設定ミスの確認なども含まれているが,独立MU検証システムにも基準ビームデータを入力した場合,入力ビームデータのエラーの確認という役割はかなり小さくなるものと考える.また,放射線治療において投与線量の全不確かさ5%以内を担保するため,治療計画における                不確かさは4.3%以内を求められているが(AAPM report13),治療計画装置の進歩とともに組織欠損や不均質部位では計算アルゴリズムの差による計算結果が異なる状況がある.

今後増加するであろう基準ビームデータを利用したコミッショニングのメリットを最大限生かす独立検証の方策と,線量計算アルゴリズムの進化とともに臨床的な治療効果を担保するためにも処方点のMU値,線量の検証だけでなく,線量分布全体の総合的な2次評価について会場の皆様と議論したいと考える.

シンポジウム4 「X線CTのエネルギーと物質の相互作用」

第3会場:会議室2 10月27日(日)14:10-15:40

茅野 伸吾,後藤 光範,大村 知己,村松 駿,保吉 和貴

X線CT装置における昨今のデュアルエネルギー技術の発展と,低電圧撮影による被ばくおよび造影剤量の低減化にともない,CT検査においてX線のエネルギーを変化させてより情報量の高い画像を得ることについて,多くの検討がなされている.エネルギーは管電圧,およびボウタイフィルタなどの装置機構でコントロールされ,その異なりはCT検査の画質に大きく影響する.

人体では組織のX線吸収に関わり,ビームハードニングやある種のアーチファクトの程度がエネルギーと深く関係することが知られている.また,一部の組織間コントラストが変化することが明らかにされている.ヨード造影剤との関わりでは,低電圧ほどヨードのX線吸収効率が高まり,造影効果が向上する.また,画質と同様に被ばくにも大きく影響する.コントラストノイズ比が同程度であれば,一般的に低電圧の撮影条件ほど線量指標であるCTDIvolは相対的に高電圧の撮影条件よりも低くなるとされる.反面,低電圧ほど表面入射線量が高いため,表在臓器の感受性には留意する必要がある.

以上より,CT検査におけるX線エネルギーと人体組織を構成する物質の相互作用を根本的に再考する機会として,基礎編・臨床編のプログラムで本企画を構築した.基礎編では,X線と物質の相互作用について,理論式をもとに解説する.また,各社CT装置の実効エネルギーを測定・比較し,その差異を検証する.臨床編は,頭部では頭蓋骨ビームハードニング,および散乱線の影響について,胸部では肺尖部ストリークアーチファクトについて,四肢では屈筋腱の描出について,それぞれ管電圧との関わりについて検証する.

入門セミナー 核医学

「気付くと100倍楽しい核医学」

第3会場:会議室2 10月26日(土)10:50-11:50

多くの施設が複数のモダリティを掛け持ちで操作し,ローテーションで装置を操作している.この場合,若い方々は既に決まっているプロトコルを使用し,ルーチン業務の流れや操作を覚えることから始めている.複数のモダリティのルーチン業務を覚えるだけでも数年かかってしまう施設もある.決められたプロトコルで提出している画像について詳しく検証,検討するまでには知識と時間が必要となる.今回は,骨検査と脳検査に着目して,ローテータや核医学未経験の方を対象に核医学の押さえておくべき画像のポイントを視覚的にわかりやすく教えることを目的とする.画像のポイントを覚えることで,ルーチン業務で出している画像が,「本当に病変をとらえることができているのか」,「画像処理方法もうちょっと見直そうかな」,「他の施設はどうなんだろう」,というような自発的な考えが出てくる.少しでも皆様の日常業務に役立つ情報を提供していきたいと考えておりますので,奮ってご参加ください.

「脳血流シンチ  -集積低下にみえるいろいろ-」

秋田県立循環器・脳脊髄センター 佐藤 郁

脳血流シンチ検査は,頭蓋内や頚部血管の閉塞・狭窄病変により生じる脳循環障害の治療方針の決定および経過観察などに用いられている.また,認知機能の診断においては,統計解析処理によりノーマルデータを基に特徴的な集積低下パターンの検出に利用されている.血管支配領域などある程度の範囲における薬剤集積変化の検出を目的としている.

核医学検査担当者の一般的な作業内容は,工程順に①検査薬剤準備②収集③画像再構成④画像確認提出である.③画像再構成までは,作業マニュアルの整備などである程度対応可能と考える.一方で④画像確認提出においては, 特に経験の少ない担当者にとっては対応に苦慮することが考えられる.

脳血流シンチの画像評価においては,脳組織の障害の二次的な要因により主病変以外の領域に集積低下がおこる場合があり注意が必要である.同時 期のMR画像などの形態画像の参照により集積変化の原因を考察することが重要となる.今回は,「遠隔効果」や「部分容積効果」などをキーワードに実臨床画像を提示して押さえておくべき画像のポイントについて解説する.画像確認提出の際の確認点の一つとして参考にして頂きたい.

「骨シンチ」

白河厚生総合病院 小室敦司

骨シンチは核医学診療の中でも古くから行われている検査法であり,悪性腫瘍の骨転移,原発性骨腫瘍,疲労骨折,代謝性骨疾患,骨髄炎および骨壊死等の検索を主目的に行われる検査である.他のモダリティが進歩してる中でも,シングルフォトン検査で一番多く依頼される検査になる.

「骨シンチなんだから骨の写真なんでしょ」なんて思っていると,実際臨床の場においてこの集積は何なのか,良性なのか悪性なのか,アーチファクトなのか,今どんな撮像が必要なのかなど悩むことになる.

今回は骨シンチのそんな問題を少しでも解消することを期待し,何故必要とされるのか,何が分かるのか,画像を読み解くのに必要な基礎的な薬剤の集積機序と正常骨での年齢,性別による違い,そして臨床例からみる良悪性の鑑別のポイントに触れ,骨シンチのストロングポイントを理解してもらう.また撮像方法や画像表示についても文献やガイドラインを紹介し,明日からの検査に役立てていただきたい.

入門セミナー DR・MG

「ディジタルの基礎および画像処理を復習しよう」

第4会場:会議室3 10月26日(土)16:40-18:10

東北大学病院 小野寺 崇

本年度から日本放射線技術学会東北支部に学術研究班が設立された.支部会員の撮影技術および研究能力向上に努めて活動していく.

乳房撮影を含む一般撮影部門は比較的若いスタッフが担当していることが多い.各施設で撮影条件や画像処理パラメータが異なるが,おそらくはそれが決定された経緯は知らずに教わった値をそのまま使用しているのではないだろうか.撮影条件は被ばくと画質の最適化に直結するものであり,画像処理の目的は診断しやすい画像に変換することにある.我々が出力する画像は「画像診断」をするために用いられるものであり,医療における意義は非常に高い.

本企画ではディジタル画像の基礎,一般撮影領域で用いられる画像処理の基礎について扱う.以下に示す2名の先生方にわかりやすく解説いただく.臨床はもちろんのこと,これから研究を始めるにあたり基礎の重要性を痛感する場面が必ずくると推察する.そのときに備え早めに復習に取り組んでいただきたい.

「もう一度復習!ディジタル画像の基礎!」

八戸市立市民病院 下沢 恵太

昨今,散乱線除去補正処理や AI (人工知能)を用いた画像処理や読影補助などの技術が登場している.これらの技術を正しく理解し使用していくためには,ディジタル画像の基本的な知識が必要不可欠であると考える.今回はもう一度ディジタル画像の基礎を復習したいと考えている.

一般的なDR(Digital Radiography)画像は以下のような過程で画像化される.CR(Computed Radiography)やFPD(Flat Panel Detector)などの検出器で取得された X 線情報はまずアナログ信号からディジタル信号へ変換するため標本化と量子化が行われる.その後撮影条件などが変化しても安定して適切な濃度コントラストで画像を出力するために自動感度調整処理が行われる.さらに診断に適した画像にするため,階調処理,周波数強調処理,ダイナミックレンジ圧縮処理などが行われ最終的な画像として出力される.今回この過程について解説する.

普段私たちが臨床現場で撮影をしている時は,どのような画像処理が施され,最終的な画像として表示されているかを意識する機

会は多くはないかもしれない.しかし画像処理も完璧ではなく処理が失敗することもあり,診断目的によってはさらなる画像処理が必要な場面もあると思われる.そのような場面でもディジタル画像の基礎が役立つと考えている.今回の内容がディジタル画像や新たな画像処理の理解の一助になれば幸いである.

「マンモグラフィの未来を切り開くために知っておきたい基礎と展望」

岐阜医療科学大学 保健科学部 放射線技術学科 准教授

篠原 範充

アナログマンモグラフィでは,フィルム(検出・記録)を用いて撮影を行い,シャウカステンで診断し(表示),その後,管理される(保存).つまり,アナログマンモグラフィは,検出・記録,表示,保存が一体化したシステムであり,日常的な品質管理は最終的な出力画像で実施することが多かった.それに対して,ディジタルマンモグラフィは,検出・記録には検出器,表示はハードコピーフィルムまたはモニタ,保存はサーバで行い,それぞれの機能を個別かつ総合的に最適化して使用する必要性がある.さらに画像処理が必要であり,品質管理を容易に実施することができなくなった.近年,ブレストトモシンセシス(以下,DBT)搭載の装置も増加し,品質管理の進め方に迷っている方も少なくない.

そこで,本講演では,ディジタルマンモグラフィのデータ取得から画像診断までのフローを確認し,マンモグラフィ従事者が知っておくべき基礎知識と品質管理の考え方を確認する.特にOutputとInputによるシステムの個別管理,Base Line ValueとWidthによる管理方法など重要なポインとに絞って説明する.これらの知識はDBTの品質管理に用いることができ,現在だけでなく未来のステップを確実にする基礎知識となる.さらに医療分野に応用が期待されている人工知能について乳腺分野での現状をご紹介したい.

入門セミナー 医療情報

DICOM RDSRを理解しよう! 「DICOM SRのQ&A」

第2会場:会議室1 10月27日(日)9:00-9:50

みやぎ県南中核病院 医療情報管理課 坂野 隆明

2020年4月より放射線安全管理の体制を整備することが決定し,DICOM規格による線量レポート(DICOM RDSR)を活用した線量管理手法に注目が集まっています.しかしながら,これまでDICOM規格といえば画像と思われているようにDICOM規格の画像以外の部分について,情報が少なかったり,難解なため理解しにくい部分があったりして,DICOMの線量レポートを利用するための基礎的な情報や知識が不足している現状です.

そこで本入門セミナーでは,DICOMの基本中の基本からDICOM構造化レポート(DICOM SR)までを丁寧に解説したいと思います.これまでに無いくらいの基礎からの入門セミナーですので,少しでも興味がある方なら,どなたでもご参加いただけます.また,DICOM RDSRについて理解されている方には,少し物足りなさを感じられるかもしれませんが,知識の整理・再確認のためご参加いただければ幸いです.

皆様のご参加をお待ちしておりますので,どうぞよろしくお願いいたします.

入門セミナー MRI

「エキスパートに学ぶMR撮像技術 Gradient Echo」

第3会場:会議室2 10月27日(日)9:00-10:00

新潟大学医歯学総合病院 齋藤 宏明

MRIの撮像技術には非常に多くのバリエーションがあり,次々に新しい撮像技術も提案され臨床機に実装されている.臨床においてもこれらを使用する機会は多く,体動に対して堅牢な方法,新しいコントラストを得る方法など,新しいものが良いと考えがちである.しかし,臨床のMRI検査において根幹を成すものはspin echo法やgradient echo法などといった基本的な撮像技術である.したがってこれらの理解は非常に重要であるといえる.

本企画では,位置決め画像や造影後のT1WIに多用されているgradient echo法を取り上げ,基礎技術と臨床技術に分け解説する.基礎技術は,北福島医療センターの丹治 一先生より,gradient echo法を使いこなす上で抑えておくべき基礎的事項について解説いただく.臨床技術は,青森県立中央病院の佐藤 兼也先生より,基礎技術を応用したシーケンスの組み立て,アーチファクトの低減技術等について解説をいただく.いずれも教科書の内容や各地域で行われる基礎講習の枠を超えて,エキスパートが思う経験則や温故知新を踏まえた観点からの基礎技術および臨床技術を学び,「自施設で応用したくなる」考え方や技術を一つでも持ち帰っていただくことで,東北地域のMR撮像技術の向上を図りたい.

大会長企画・MRI JICA派遣報告

「JICAの国際協力事業に携わって」

第3会場:会議室2 10月27日(日)13:00-13:30

東北大学病院 根本 整

JICA(独立行政法人国際協力機構)は,日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として,開発途上国への国際協力を行っています.ODAには,日本が開発途上国に返済義務を課さないで資金を供与(贈与)する「無償資金協力」というものがあり,開発途上国の発展のために必要な資材や機材,設備などを購入する資金として使われています.

日本はこれまでに,ネパール連邦民主共和国に対して無償資金協力「トリブバン大学教育病院建設計画」(1982年)や「トリブバン大学附属教育病院拡充計画」(1990~1992年)を通じて医療施設の建設,拡充や機材の整備を支援してきましたが,現在は施設・機材ともに老朽化が見られます.また,同病院は,カトマンズ市内で唯一の現職医療従事者に臨床教育を実施する機関ですが,機材の不足と老朽化により,十分な臨床教育ができない状況です.

これらに次ぐ事業として,この度私は「トリブバン大学教育病院医療機材整備計画」に携わる機会を得ることができました.本事業で新規導入された医療機材にはMRI装置(1.5T)が含まれており,私はMRI装置にかかるスキルトレーニングを担当しました.

今回の報告では,国際協力事業に携わることになった経緯や実際に私が担当した業務内容,そして事業を経た感想について話させていただく予定です.